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《The box weaves history》
  - 歴史を紡ぐ箱 -

 

Paper in paraffin wax, wool
20 x 20 x 20 cm each, 2024
Masaki Hagino

Sitespecific work in "Mensroom" at Kato family house in Kameyema, Mie, Japan

 この作品は、人間の脳と、紡がれた歴史の関係性を考察したものです。文化・歴史は人間の経験、そしてその記憶を媒介して紡がれています。人々は経験した情報を口伝、もしくは文章や絵に残し、歴史を後世に伝えてきました。その情報は受け手の記憶の中に仕舞われ、やがてまたコミュニケーションを通して拡散されます。このように、文化・歴史は人間の脳を媒体として、時を超えて紡がれていき、そしてそれはコミュニケーションの中で言語的な影響を受けながら伝わっていきます。
 「人間の思考は言語の影響を受けている」という仮説である「言語的相対論(Linguistic Relativity Hypothesis)」は 20 世紀初頭に提唱されましたが、この仮説に基づき、言語と思考の関係性は脳科学においても研究が進められています。
多くの研究が示すように、言語と思考は密接な関係にあり、歴史の伝承にも間接的な影響を与えていると言えます。
 本制作では、脳に見立てた立方体に「人間は考える葦である」という有名な一節を残したフランスの哲学者ブレーズ・パスカルの『Pensées』からの文章を埋め込みました。加えて、地元三重県亀山市の歴史や、展示場所である「加藤家長
屋門及び土蔵」にまつわる歴史資料も使用しています。また本制作にあたり、地元企業との共同制作を掲げ、1927 年創業のカメヤマローソク様からの蝋の素材提供を頂きました。蠟燭の芯に見立てた糸でそれぞれの箱と繋げることで、個々の脳と思考の関係性や、コミュニケーションにおける伝承を表現しています。

This work explores the relationship between the human brain and the history woven through human experiences. Culture and history are intertwined through human experiences and their memories. People have shared their experiences through oral tradition, written texts, or art, passing history down to future generations. This information is stored in the receiver's memory and eventually disseminated again through communication. In this way, culture and history are transmitted across time, mediated by the human brain, while also being influenced by language in the process of communication.

The hypothesis of "Linguistic Relativity," which posits that "human thought is influenced by language," was proposed in the early 20th century. Based on this hypothesis, the relationship between language and thought has been the subject of research in neuroscience. Many studies suggest that language and thought are closely interconnected and that they also have an indirect impact on the transmission of history.

In this work, I embedded a passage from French philosopher Blaise Pascal's "Pensées," which famously states, "Man is but a thinking reed," into a cube that symbolizes the brain. Additionally, I incorporated historical materials related to Kameyama City in Mie Prefecture, as well as the history of the exhibition site, "Kato Family Longhouse Gate and Storehouse." This project also emphasizes collaboration with local businesses; I received wax materials from Kameyama Candle Co., founded in 1927. By connecting each box with thread resembling candle wicks, the work expresses the relationship between individual brains and thoughts, as well as the transmission of knowledge through communication.

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ひとつの脳を立方体に
​ この立方体ひとつひとつが歴史を蓄積したひとつの脳を形どっています。中には2種類の文章から抽出された単語・文節により切られた紙が埋め込まれています。一つは「人間は考える葦である」という一説で有名なフランスの哲学者ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal、1623 - 1662)の『Pensées』の内容です。彼はその中で人間の弱さと偉大さを表現しました。彼は人間の存在がいかに不安定で儚いものであっても、思考によって自己を超え、神と向き合う意義を見出すべきだと主張しています。
 もうひとつは、この加藤家屋敷跡の歴史や、亀山宿にまつわる歴史を埋め込みました。こうして思想と歴史を含んだ脳を形成しています。
歴史と記憶の積層
​ 今回の江戸末期からの建造物であり、市の文化財にも登録されている加藤家屋敷跡の男部屋・若党部屋での両展示に際し、「歴史」というキーワードで作品制作をすることを考えていました。上でも述べたように、歴史というのは様々な媒体に残らされてきましたが、その内容を理解する必要があり、つまりは脳を媒介しなければ歴史は時代を超えることはできません。
​ 白濁するこのパラフィンワックスの融点は58度ほどですが、その温度により空気の含有量が変わるため白濁に多少の色の変化が起こります。これを利用し歴史と記憶の積層を表現するために、細かく層を作りながら形成させました。
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脳と​ネットワーク
 歴史を含んだ脳が一つだけ単体で存在していても、その歴史は未来へと紡がれていきません。人と人が繋がり、情報を共有するネットワークがあって初めて歴史は紡がれていくはずです。
 蝋を用いた今回の作品では、地元企業のカメヤマローソク様からの素材提供をいただきました。
蝋との親和性を持たせるために、この蝋の芯で各立方体を繋ぐことでこのネットワークを表現することにしました。

​カメヤマローソク
https://www.kameyama.co.jp/

この作品の制作プロセスについての記事はこちら!https://note.com/masakihagino_art/n/ndff197ef1216

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